1月つき4日にちのことし最初さいしょの東京とうきょう株式かぶしき市場しじょうは、能登のと半島はんとう地震じしんの経済けいざいへの影響えいきょうを懸念けねんする見方みかたなどから日経にっけい平均へいきん株価かぶかは一時いちじ、700円えん以上いじょう値下ねさがりしました。

一方いっぽう、ニューヨークでは1月つき2日にちにダウ平均へいきん株価かぶかはわずかながら最さい高値たかねを更新こうしん。ウォール街うぉ-るがいではことしの株価かぶかを強気つよきに予想よそうする専門せんもん家かも多おおくいます。ことしの金融きんゆう市場しじょう、どうなるのか。ニューヨークでマーケットを取材しゅざいしている記者きしゃのつぶやきです。

（アメリカ総局そうきょく記者きしゃ 江崎えざき大輔だいすけ）

※表紙ひょうしの写真しゃしんは、ニューヨーク証券しょうけん取引とりひき所しょ近ちかくにあるブル（雄ゆう牛うし）の銅像どうぞう。株価かぶか上昇じょうしょうトレンドの象徴しょうちょう。

ことしは強気つよき相場そうばとの見方みかた

ニューヨークのウォール街うぉ-るがいを取材しゅざいする記者きしゃとしては、この1年ねんの株価かぶかの動うごきを見みるうえで年始ねんしからの数すう週間しゅうかんの値動ねうごきは重要じゅうようです。

1月つき2日にちから、わずかではあるものの、ダウ平均へいきん株価かぶかは最さい高値たかね更新こうしんという前向まえむきなニュースで沸わいていました。

「S＆P500の株価かぶか指数しすうは2024年ねんの年末ねんまつには5200ポイントに達たっし、最さい高値たかねを更新こうしんすると予想よそう」

ウォール街うぉ-るがいの資産しさん運用うんよう会社かいしゃ大手おおての「オッペンハイマー・アセット・マネジメント」のチーフストラテジストは、こんな強気つよきの予想よそうを2023年ねん12月つきに発表はっぴょうし、これが少数しょうすう派はではなく、多おおくの投資とうし家かに受け入うけいれられている印象いんしょうです。

“利下りさげ”イヤーが株かぶ高だかに

市場しじょうを明あかるくしている大おおきな要因よういんは、なんといってもこれまで利上りあげを続つづけてきたFRB＝連邦れんぽう準備じゅんび制度せいど理事りじ会かいがことし利下りさげに転てんじるだろうとの見方みかたです。

2023年ねん12月つきに開ひらかれたFRBの金融きんゆう政策せいさくを決きめるFOMCでは、会合かいごう参加さんか者しゃ19人にんによる政策せいさく金利きんりの見通みとおしが示しめされ、政策せいさく金利きんり1回かいあたり0.25％とすると、ことしは少すくなくとも3回かい利下りさげが行おこなわれる想定そうていが示しめされました。

アメリカのシンクタンク、CEPR＝経済けいざい政策せいさく研究けんきゅうセンターのシニアエコノミスト、ディーン・ベイカー氏しは、FRBの最初さいしょの利下りさげは2024年ねん3月つきに行おこなわれるだろうとの見通みとおしを示しめし、年内ねんないに4回かい利下りさげが行おこなわれ、アメリカ経済けいざいは堅調けんちょうに推移すいいすると予測よそくしています。

市場しじょうとFRBのズレ

一方いっぽう、楽観らっかん的てきな市場しじょうの見方みかたと、FRBの本音ほんねとの間まにはズレがあるのではないかとの見方みかたも少すくなからずあります。

中央ちゅうおう銀行ぎんこうの決定けってい過程かていを熟知じゅくちする、FRBの元もと副ふく議長ぎちょう、プリンストン大学ぷりんすとんだいがくのアラン・ブラインダー教授きょうじゅは、パウエル議長ぎちょうとも今いまでもよく話はなす仲なかですが、パウエル議長ぎちょうは慎重しんちょうだと語かたり、もし自分じぶんが議長ぎちょうだったらもっと慎重しんちょうだろうとも話はなします。

ブラインダー教授きょうじゅ

「私わたしはパウエル議長ぎちょうのことは良よく知しっているが、とても慎重しんちょうな人ひとだ。市場しじょうというのは、ナイフの刃はの上うえに座すわっているようなもので、パウエル議長ぎちょうの発言はつげんしだいでどちらにも動うごく準備じゅんびができている」

FRB議事ぎじ録ろく「状況じょうきょう次第しだいでは利上りあげも」

ブラインダー教授きょうじゅの発言はつげんは1月つき3日にちに的中てきちゅうします。

この日ひ、公表こうひょうされた2023年ねん12月つきのFRBの金融きんゆう政策せいさくを決きめる会合かいごうの議事ぎじ録ろく。市場しじょうは早期そうきの利下りさげ議論ぎろんの内容ないようを知しりたがっていました。

議事ぎじ録ろくではほぼすべての参加さんか者しゃが2024年ねん中ちゅうに金利きんりを引き下ひきさげることが適切てきせつであるという見方みかたを示しめしていましたが、見通みとおしには不ふ確実かくじつ性せいが高たかく、経済けいざいの状況じょうきょう次第しだいでは利上りあげが適切てきせつになる可能かのう性せいもあると指摘してきしていたのです。

FRBは過去かこ、インフレの兆候ちょうこうを読み誤よみあやまったがために急速きゅうそくな利上りあげを迫せまられる結果けっかとなりました。拙速せっそくな利下りさげは避さけたいと考かんがえているはずです。

インフレ再燃さいねんないのか？

2024年ねんの金融きんゆう市場しじょうを見みるうえで、インフレの再燃さいねんは本当ほんとうにないのかは、実じつは大事だいじなチェックポイントであるように思おもいます。

ウォール街うぉ-るがいで日々ひび取材しゅざいをしていると、インフレ再燃さいねん論ろんを唱となえる人ひとは少すくないのが実情じつじょうですが、金融きんゆう街がいを一いち歩ほでると、国際こくさい的てきな紛争ふんそうの拡大かくだいが世界せかい経済けいざいにもたらすリスクに警鐘けいしょうを鳴ならす人ひともいます。

その1人にん、アメリカ・スタンフォード大学だいがくの著名ちょめいな政治せいじ学者がくしゃ、フランシス・フクヤマ氏しです。

フクヤマ氏しはことしのリスクとして、イスラエルとイスラム組織そしきハマスの衝突しょうとつがイランに広ひろがることだと話はなします。

イエメンの反はん政府せいふ勢力せいりょくフーシ派はが紅海こうかいを航行こうこうする船舶せんぱくへの攻撃こうげきを繰り返くりかえしていますが、世界せかいの海運かいうん大手おおては紅海こうかいやスエズ運河うんがを通とおるルートを避さけ、時間じかんと距離きょりがかかるアフリカ南端なんたんの喜き望もち峰ほう経由けいゆのルートを取とり始はじめています。

12月つき31日にちにはアメリカ軍ぐんがフーシ派はのボート3隻せきを沈没ちんぼつさせ、1月つき1日にち、これに対抗たいこうしたのか、イランは軍艦ぐんかんを紅海こうかいに派遣はけんしたとイランの国営こくえいメディアが伝つたえ、緊張きんちょうが高たかまっています。

フクヤマ氏し

「最もっとも差し迫さしせまった危険きけんは、ガザ地区ちくでのイスラエルとイスラム組織そしきハマスの軍事ぐんじ衝突しょうとつが激化げきかすることだ。すでに国際こくさい的てきな海運かいうんの運賃うんちんに影響えいきょうが出でている。イランを直接ちょくせつ、巻き込まきこんだより広範こうはんな戦争せんそうが起おきれば、世界せかいのサプライチェーンなどにもっと深刻しんこくな影響えいきょうが及およぶのは明あきらかだ」

イランが巻き込まきこまれるリスク

中東ちゅうとう情勢じょうせいが緊迫きんぱく化かし、そこにイランが本格ほんかく的てきに加くわわるようになれば、原油げんゆの輸送ゆそうが滞とどこおり、原油げんゆ価格かかくが上昇じょうしょう、世界せかい経済けいざいは大おおきく混乱こんらんすることが避さけられなくなってしまいます。

FRBが利下りさげに踏み切ふみきれば、経済けいざいを冷ひやす要因よういんが減へることになり、アメリカ経済けいざいにとってはプラス材料ざいりょう、株価かぶかにも好こう材料ざいりょうとなるのでしょうが、市場しじょうとFRBの思惑おもわくのズレが気きになります。

そして2024年ねんは2つの戦争せんそうに直面ちょくめんしてのスタートで、不安ふあんはぬぐえません。

2024年ねんの干支えとは辰たつ（たつ）。証券しょうけん業界ぎょうかいでは「昇のぼり竜りゅうのごとく上昇じょうしょう相場そうば」と願がんかけも行おこなわれますが、「画竜点睛がりょうてんせい（がりょうてんせい）を欠かく」のことわざのように、最後さいごの仕上しあげを怠おこたり、勢いきおいを欠かいた事態じたいにならないか、私わたしはマーケットを一層いっそう注意深ちゅういぶかく見みていきたいと思おもいます。

注目ちゅうもく予定よてい

11日にちにアメリカの12月つきの消費しょうひ者しゃ物価ぶっか指数しすうが発表はっぴょうされます。FRBによる利上りあげの影響えいきょうでこのところアメリカのインフレは鈍化どんか傾向けいこうが鮮明せんめいとなっていますが、改あらためてインフレが鈍化どんかしていることが確認かくにんされるかが焦点しょうてんです。